がんを考える8~過換気症候群

再入院の後退院し自宅療養していた妻が、ある日突然、手が震え出し呼吸が荒くなり苦しみ出したことがありました。救急車で運ばれた病院で診てもらった結果、出された診断は「過換気症候群」というものでした。後で聞いたところ、落ち着いて対処すればそれほど大きな問題にはならないということですが、初めて経験するとびっくりしてしまいます。

これはいわゆる「過呼吸」という状態を引き起こしたもので一種の発作です。がんとは直接関係のないことなのですが、過呼吸が起こるのは、精神的ストレスによって自律神経のバランスが崩れ、呼吸中枢が一時的に正常に機能しなくなるためと考えられており、そのメカニズムはわかっていないと言われています。

妻の場合は、自分が60歳台半ばまでいたって健康に過ごしてきて、初めて腎臓全摘出という大きな手術を受けたことに加え、私自身にも同時期に癌が見つかり、夫婦二人が同時期に癌の手術を受けるという異常事態になったことで大きな不安に襲われたことに起因しているようです。この時には、私の2度目の手術も終わっており、もう不安は解消されたのではと思っていたのですがそうではなかったようです。

過換気症候群が生じる原因は様々ですが、1番多いのは精神的ストレスだと言われています。実際、過換気症候群は「ストレス関連疾患」に含まれていて、これは心理的、社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気で、片頭痛や自律神経失調症など多くの疾患があるそうです。

過換気症候群は、主に不安や恐怖、不満や怒り、焦りや緊張、プレッシャーや不眠などが続く、心のストレスが引き金になるとのことで、また特定の場所や人物、音やにおいなど、本人がストレスを感じやすい環境で起こる傾向が見られるそうです。

過呼吸が起こった時の対処法として、知っておきたいのが腹式呼吸だと言われています。過呼吸は呼吸が浅く、速くなることで息苦しさや目まい、手足のしびれなど様々な症状が出ますが、それらは深くゆっくりとした呼吸に変えることで、改善が可能とのことです。

息を吐く時にお腹をへこませ、息を吸った時にお腹が膨らむ、そう意識してゆっくりと呼吸を行う腹式呼吸は、浅く速くなった呼吸を正常に戻す効果が期待できるため、過呼吸が起こった時の対処法として覚えておくことが勧められています。

いずれにしても、今回のことで、退院した後もストレスが無くならなければ完全に回復したとは言えないことがわかりました。しかも、身体のどこかが痛いとかいうのではなく、ストレスは精神的な問題なので時間をかけてゆっくりと治していく以外にないだろうと思いました。まだまだ療養は続くことになります。

ペーパーバッグ法への疑問
小さな袋を口に当てて吹いたり吸ったり繰り返すペーパーバッグ法は、過換気症候群の一般的な対処法として長く実践されてきましたが、実はこの方法に医学的な根拠はないと言われています。昔から言われているおばあちゃんの知恵で効果のあることもあるのでしょうが、科学の発展で時代とともに常識も変わってくるので注意が必要です。

そもそも過換気症候群で何故、過呼吸が起こるのか、という点について、恐らく精神的な不安や過度の緊張状態が関係しているのだろうと考えられてはいるものの、明確な原因がわかっていないため、その対処法に根拠がないのは不思議ではないとのことです。

またペーパーバッグ法は自分の吐き出した二酸化炭素を吸うことで、アルカリ性になった血液を元の状態に戻していく方法ですが、血液がアルカリ性になるから呼吸が苦しくなる、という訳ではないので、この方法に過呼吸の原因を取り除く効果があるかどうかには疑問を感じる、という声もあるようです。

~つづく~

蓬城 新

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