シンゴのきになる話㉞ ギリシャ神話アポロンの巻(その4)
ダフネはまだ男女の恋などを知らず、森の中を駆け巡るのが好きな乙女でございました。
そして河の神である父の命じる門限の時間もきちんと守る可愛い娘でございました。
さて、エロスの黄金の矢を胸に受けましたアポロンは森の中でダプネを見つけると、もう、一目ぼれ状態、胸キュンなのでございます。そして、その胸の内を伝えようとダプネに近づいていきました。
アポロン ダプネよ、私のこの燃える愛を受け入れておくれ
ダプネ えっ、何なんの、急に、失礼な。私は男なんか嫌いなのよ、この不潔
アポロン 何を言うんだ、私はアポロンだよ。ゼウスの子だ。神々の貴公子だ
ダプネ 止めて、聞きたくないわ、男はだれでもそんなこと言うのよ、さよなら
アポロン 待ってくれ、お前がいくら走っても私にはかなわないのだよ
ダプネ ダメよ、いくら言い寄られても、あなたの気持ちは受け入れません
アポロン ほ~ら、追いついた、ダプネ、二人で一緒に愛を語ろう
ダプネ お父様、お父様、ヘルプ・ミー。私はいつまでも清い体でいたいのです。
たとえそれがどんなものであっても
アポロンがダフネの体に触れようとするその時、河の神である父が娘の願いを叶えてくれたのです。
ダフネの体は指先から徐々に枝になり始め、とうとう全身が一本の木になってしまったのです。
アポロン ダフネ、私はお前のことを一生忘れないよ。いつまでもそばにいてほしい
そうだ、この木の枝で冠を作りいつも頭に載せておくことにするよ。
ということで、アポロンのスポーツの大祭では月桂冠が贈られることになったのです。
この話はなんか牧場の神パンに追いかけられた妖精が葦に変身した話に似ていますね。
また日本では筒井康隆の『佇むひと』という小説に政府を批判する人々が木に変えられていくブラックユーモアの物語がございます。きっとこの神話がもとになっているのではないでしょうか。
ギリシャ神話アポロンの巻(その5)につづく