追憶のオランダ(60)昼と夜

日本でも夏と冬では昼と夜の時間の長さが違うことは生活の中で十分体感しています。しかし、日本より緯度の高いところでは季節による差がもっと極端にでてきます。これは誰もが知っていること。私がオランダに赴任した時期は5月中旬、日本でも6月の夏至に向かってどんどん日が長くなってくる頃でした。その日勤務時間が終わって事務所の人たちと食事に行くことになり6時過ぎに建物から外に出たのですが、太陽はまだまだ高くとても夕食の時間のような気がしません。店で数時間酒を飲みながらゆっくりと食事をして外に出たのですが、これでようやく夕方になったなという感じなのでした。日本との緯度の差と夏時間を採用していることで、おそらく感覚的に日本の時間感覚より3時間は時計を早く進ませた設定になっていたようです。さらに夏至に向かって昼間が長くなる。ということで、春分の日以降は外の明るさだけで判断していると、ついうっかり夜更かしをしかねません。
したがって、家の窓、特に寝室の窓には厚手のカーテンが必要です。冬場の断熱効果を期待するのもそうですが、それよりも夏場に就寝時の外光を遮断するのも大きな目的なのです。
冬は、全くその反対で、朝はなかなか明るくなりません。やっと9時過ぎに薄明るくなるので、出勤時間はまだ真っ暗闇の中です。外に止めてある車のフロントガラスにびっしりと着いた霜ならぬ氷をガリガリと掻き落とし、車内を温めてなければすぐ出発とはいきません。事務所に着いてもまず大抵一番乗りで、真っ暗な部屋で非常口を示す緑のランプの薄明かりの中電気のスイッチを押し、部屋を明るくする。でも暖房だけは入っている。テレックスなどに一通り目を通して一仕事終わるころにようやく外の景色が窓越しに見えるようになるくらいです。夕方も日暮れは早く、3時頃にはもう薄暗くなり、曇りの日などは3時前でも外は夕方のよう。こんな調子ですから、もし時計がなければ大変困ります。おのずと時計に従って行動をするということになります。
昔、日本では、おてんとうさまの動きに合わせて夏冬ことなる昼間の時間を割り振って一日の時間を決めていたようですが、聞くとオランダでも夏場は長く冬場は短い時間働いていたとか。人間も自然の一部である以上、その方が照明・暖房などの無駄なエネルギーを使わずにすんで、生物の生き方としては理にかなっているのでしょうね。
昼と夜の長さとは関係ありませんが、特に冬場に車の運転をしていて感じたことがあります。緯度の高いところでは太陽の高度が上がらないため常に低いところから太陽に照らされること。夏場にギラギラした太陽を避けるためにサングラスをかけるのは理解できますが、高緯度の土地では冬場にこそサングラスが必要、何故なら太陽に向かって運転する場合、車のバイザーだけではどうしても前が見えにくくなるからです。したがって、朝ドイツ(オランダから見て東の方角)に向かって出かける時はほんとうに運転しにくかったのです。そして帰りがまた似た状況です。日が沈んでしまえば別ですが、ちょうど日没直前はサングラスなしでは運転しにくかったのを覚えています。

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