2019年11月6日 / 最終更新日時 : 2019年11月6日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」より「落日を」 落日を オレンジひと房を 陽に透かす 果肉には 点々と紅い血の雫 行き倒れた物乞い 革命の幻に傷を負った戦士 オレンジの樹の下に 癒されることのない渇き 光るオレンジの濃緑の葉 香るオレンジの白い花 生きの […]
2019年10月30日 / 最終更新日時 : 2019年10月30日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」より「城」 城 風化が進行する高い城壁 ひと群れ 菊科と思われる草がとりつき 橙色の花を咲かせている 肋骨交夜穹窿 堅固な梁でドームを支え 高く より高く 鈍化への烈しい希求 絶対を求める精神は 血まみれの手を要求した 嫌悪 憎しみ […]
2019年10月16日 / 最終更新日時 : 2019年10月16日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」より「白馬」 白馬 内海の白浜を 疾走する白馬 ざわめき揺れあがる おまえの豊かなたて髪は 波よりも優美な白銀の流れ 砕ける波頭よりも繊細な 瞬時のきらめき カマルグの原野 潮のさす沼地に戻れば おまえの仲間とともに 闘牛の牛たちも放 […]
2019年9月25日 / 最終更新日時 : 2019年9月25日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」より「塊あるいは魂」 塊あるいは魂 手を触れるだけでばらばらと落ちる小さな舟型をした緑の植物 の塊 地に落ちた肉厚の塊のひとつひとつが残らず根を出し 朽ちて行く古い塊の先には見る間に数個の芽が花びら状に寄り 合って吹き出す おびただしく殖え続 […]
2019年9月11日 / 最終更新日時 : 2019年9月11日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」〜「果汁」 果汁 ふるさとのみかんを ジューサーにかける 滴り落ちる果汁の 香り高い優しさ なんて 安易な思い入れに 陥るのはよそう 銘ずべきは 季節のはしりを 送ってくれた 叔父夫婦の心根であって 果汁では まして メカニックな […]
2019年9月4日 / 最終更新日時 : 2019年9月4日 Nishi 荻 悦子 荻悦子詩集「時の娘」より「サンタ・ローザ」 サンタ・ローザ サンタ・ローザ 転がる 白木のテーブル 水を得てそりかえるポトスの蔓の下 サンタ・ローザ 転がる 田舎娘ローザが転べば 口笛のひとつも飛ばしてみたいが 尼僧姿ローザ様 転ぶとあらば やはり見ぬふりをするべ […]