フランスあれこれ105 パリの速達便

凡そ60年前パリに赴任した頃に見た当時の通称“ブルーメール”(緑の郵便)には感心するやら驚くやら、ある種のカルチャーショックを見た思いでした。そして約20年後に二度目に赴任した時には既に姿が消えていました。私自身の記憶からも消えていました。

一体これは何だったかといいますとパリ中に張り巡らされたエアーチューブ(圧縮空気パイプ)を使った速達配送郵便です。電話での交渉内容を時を置かずにお互いのサインの交換で確認する手段として利用されていたものです。配達は郵便局での受付から3時間以内が原則で、早い時には30分と掛からなかったと言います。

パリでは電柱がなく電線は全て地下に配線されています。或いはパリの大改造以来、地下水道が整備張り巡らせていますのでエアーチューブの設置も比較的容易だったことは想像できます。

フランス人の自慢話として、そして聊か過去の遺物だと言いながら聞いた記憶では先の大戦(第一次そして第二次世界大戦)では大変活躍した、或いはその頃が最盛期だっただろうということでした。要は軍事用の機密文書の速達便だったという事でしょうか。時代の変化とともに電話の普及、Telex、更にはファックスの普及などでコストと利用価値の観点から衰退に至ったのでしょう。

ちょっと調べてみるとこのシステムは日本でも実用化されていた(或いは今も?)ようです。ただパリ中を張り巡らせるという規模ではなく、病院とか大会社など一つのビルの中で利用されていた(いる?)ようです。しかしネットの時代早晩消える運命でしょう。

上の写真は日本の病院で今も使われている様子です。また下の写真は1966年このシステムの100年記念で発行された切手です。

(参考)電話は1890年頃から実用化がスタートし、Faxは1930年頃から実用化が始まったと言います。

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