笑説「ハイムのひろば」12~修復完了

修復完了

そして、ついにその日がやってきた。修復完了だ。ログインしても真っ白で見えなかった管理画面がはっきりと現れるようになった。思わず一人でガッツポーズ!ここまでの道のりは長かった。2月2日のトラブル発生から2週間以上かかった。いろいろな思いが交錯した。途中で、何度か不安に苛まれたこともあった。しかし、決して諦めず、いつかこの日が来ると信じていた。そこだけは、自分で自分を褒めてあげたい!(マラソンの有森かい!)

これで、みんなが、「ハイムのひろば」に「蝶図鑑」に「クイズひろば」に問題なくログインできる、編集ができる。西野は、直ぐに次の作業に取り掛かった。それは、つくり隊全メンバーに対してサイト復旧の連絡と新しいサイト用のIDを発行することだ。旧管理画面とは別のフォルダに引越しをしたために以前のIDではログインできない。新しいIDとパスワードが必要だ。これを済ませれば肩の荷を下ろすことができる。多少の微調整は残っているがこれはいつでもできる。

3日後に勉強会に出席した。「おはようございます!」と西野はいつもより大きな声でドアを開けた。先に来てテーブルの準備をしてくれていた宮下と雛形が二人同時に「おはようございます。お疲れさまでした!」と声を掛けてくれた。「ありがとう!」と答えながらなんだが目元が緩くなっていた。そして、さらにひとり一人とやってくるメンバーは、みんな笑顔で「ご苦労様!お疲れ様!」と労ってくれる。そう、みんなのこの笑顔が見たかったのだ。

今回のことで西野が思ったことが実は三つある。まず一つは、経験したことのない難しい問題だったにも関わらず、最後までできないとは思わなかったこと。今までならこのような場合、少なくとも一両日で片づけてきたことを思うと、一週間もかかって解決できなくて、何故諦めの境地にならなかったのか?答えは未だに分からないが、技術の未熟さを感じながらも何とかなりそうな気がずっとしていた。プロなら一発で解決するはずだからそのレベルに到達するにはまだ道は遠いが。

二つ目は、解決できないでいた2週間の間の気持ちのことだ。確かに、修復なった時の喜びは「苦悩」から脱出できたことで思いっきり飛び上がってもいいほど嬉しかった。しかし、うまくいかない、思うように出来ない自分にふがいなさを感じて「苦悩」という言葉を使ったが、その言葉ほどの「苦しさ」を本当に感じていたのかというと、何だかそうではないような気がしている。むしろ逆に楽しんでいたのではないかとさえ思えて、このことが諦めなかったことと繋がっているかもしれない。

三つ目は、孤独を感じなかったこと。当初は、このトラブルを解決できるのは自分しかいないと思って取り組んだ。始める前には、今回は孤独な戦いになるかもしれないと思っていた。ところが、いざ取り掛かると、何故か自分一人で戦っているという感じはなく、何だか見守られているようなそんな気がしていた。これは不思議な感覚だった。だからなのか、孤独と焦燥感との戦いになると気を引き締めて望んだ割には、あまり焦りもなく落ち着いてできたのだ。

さて、復旧したとメンバー全員にメーリングリストで伝えた以上は、小さいエラーもきっちりしないといけない。次にやるべきことは、CGIの設定である。リンクエラーの修正は比較的簡単で、メンバーの誰かに協力をお願いすることはできる。しかし、CGIを理解しているメンバーは殆どいない。従ってその設定は全て西野の仕事になる。CGI(Common Gateway Interface)とは、ウェブサーバ上でユーザープログラムを動作させるための仕組みである。

一般的なホームページは、HTMLと言われる装飾機能を持った簡易言語で書かれている。HTMLは、制作者がサーバ―にアップロードすれば、変更するまで毎日、毎回、同じ物を表示し続ける。一方、CGIで作成されたページは、制作者はもちろん、訪問者が更新したり、 訪問者のリクエストに応えて毎回違ったページを表示させることもできる。この事からCGIを利用しているサイトは、インタラクティブ(双方向性)なWEBサイトと呼ばれている。CGIはサーバー上で動くプログラムである。

具体例として挙げれば、カウンターや電子掲示板、さらにアンケートなどのプログラムなどがある。カウンターは、説明不要と思うが、掲示板は、BBS(Bulletin Board System)と呼ばれ、閲覧者がメッセージ文や画像を投稿するとそれが自動的に表示される。アンケートも同様に、参加者の答えが集計されて結果が表示されるので大勢の意見を集めるには便利である。「ハイムのひろば」グループにおいては、各サイトの「カウンター」「アンケート」、BBSは「井戸端トーク」「私のおすすめこの一冊」「ひと言感想ノート」などあちこちに利用され、インタラクティブなサイトとして一役買っている。

「ホームページは更新が命」という言葉がある。目的にもよるが、じっとして動かないホームページは概して面白くないものだ。管理者と閲覧者の間で活発に交信が行われる動きのあるものは、非常に楽しい。管理者側から一方的にメッセージを発するだけではなく、閲覧者からの質問や意見の投稿を受け取れる仕組みを持つことは、サイトの改善にも役立つ重要な要素を含んでいる。

約一ヶ月の間、後ろ向きな仕事にかかりっきりだった西野は、ようやく解放されてゆったりとした気分で一日を過ごした。次の日も気分は上々、晴れやかで心身ともに疲れを癒すことができた。三日目になって少し違和感を感じた。持病の手の痺れが出た。それも今までに感じていたところとは違う部分にだ。そういえば、この一ヶ月弱の間、不思議と脚の痛みも手の痺れも殆ど気にならなかった。何故だろう?それどころではないという気持ちがどこかで働いたのだろうか。

この一か月間も、薬の飲み方は以前と変わらず飲んでいた。脚や手の痛みや痺れも副作用による眠気もあまり強く感じることがなかった。「病は気から」で、病気のことを忘れれば何も感じないのか。あるいは、「心頭滅却すれば火もまた涼し」で、集中することがあれば、廻りのことは気にならなくなるのか。

ところが、そろそろ次の企画でも考えようと、夕食後、パソコンに向かった時、何だか急に眠気が強まった。あっ!また来たな!まあいいかと思って横になった。そして、散歩の時間が過ぎていると言って起こされたのは、翌朝の7時5分過ぎだった。眠ったのが昨夜8時頃だったので11時間眠ったことになる。また、トラブル発生前と同じだ。またこの繰り返しになるのか。解決してほっとした途端に状況が元の通りに戻ったようだ。こんなことなら、トラブルがずっと続いていた方が自分の身体のためにはいいのか。

翌週、通っている整形外科で……。
「どうですか?」
「時々手の痺れがあるくらいで大きな痛みはありません。先生、発症してかれこれ一年になるのですが、あとどれくらいかかるんでしょうか?」

「自然に消えるまでもう少し待ちましょう。細かい作業はできますか?」
「はい。毎日パソコンのキーボードをたたいています!」

休みなさいと何度も言っているのに、仕方がないなこの人は、という顔をして先生、「では握力を測りましょう!」
「右手、42、左手、42」と看護師。

「はい。結構です」

~つづく~

蓬城 新

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