がんを考える5~MRI検査
私は60代半ばまで健康で大きな病気をしたことがなく、会社指定の健康診断以外にはあまり病院とは縁のない暮らしをしてきました。従って、医療用語、検査用語などにうとく言葉の意味もそれほど詳しく知りませんでした。そこで、今回のことをきっかけに少し調べて書き留めてみることにしました。みなさんは既によくご存じかもしれませんが、もし参考になれば幸いです。
妻が腎臓がんにかかっていることがわかり、自分も心配になって検査専門機関でCT検査を受けたところ、腎臓ならぬ膀胱に直径4.2㎝の腫瘍らしきものが見つかりました。この検査結果のCD画像を見た癌専門病院の先生は、まず癌に間違いないでしょうが、さらに詳しく調べましょうとその場で電話して、再度、検査機関にMRIの予約を入れてくれたのでした。
「ここで検査するんじゃないんですか?」と疑問を投げかけると、「もちろんできるけど時間がかかるので。早い方がいいでしょ。」との返事。大きな病院だけにやはり多くの患者をかかえているからでしょう。最初にCT検査をした検査専門のところに、先生自らその場で電話してくれました。実にスピーディだし、看護師にやらせるのではなく自ら受話器を取って電話してくれる、そして少しでも早めに手術ができるようにと配慮してくれているのが好感が持てました。
MRI検査とは
MRI(磁気共鳴画像)とは、強い磁石と電波を使って体の一部の状態を検査する方法。患者の体を切ったりすることなく、いろいろな角度から体の断面の写真を撮影することができます。MRIで使われる磁石や電波は、普通の場合は人体への影響はありません。ただし、次にような方はMRI検査を受けられません。
・心臓ペースメーカーや刺激電極などを身に着けている方
・体内に脳動脈クリップや人工関節などの金属が埋め込まれている方
・以前に外科手術を受けたことがある方
・妊婦、または妊娠されている可能性のある方
・閉所恐怖症など、狭い所が苦手な方
・入れ墨のある方
検査の方法
①MRIの検査時間は全部で30~60分程度。
②検査装置は検査室の中央にあり、検査担当者の指示に従って検査台の上に寝る。
③身体の位置が決まったら、検査台が自動的に装置の円筒内に入っていきます。
④検査が始まる時には、担当者がその都度マイクで知らせてくれる。
⑤検査中は、装置の中で一人きりですが、常に検査担当者と連絡を取ることができます。万が一気分が悪くなったりした場合は、手に持ったブザーなどで検査担当者に連絡するようになっています。
⑥検査中は、木槌で木をたたくような連続音が周囲から聞こえてきます。
造影剤
MRI検査では、より詳しい検査を行うために「造影剤」を使うことがあり、普通、静脈から注射します。経口的に飲用することもあります。これらの造影剤は比較的副作用が少ない医薬品ですが、次のような注意が必要です。
・喘息にかかったことがある方、透析を行っている方、または、アレルギー体質の方は、事前に担当医または検査担当者に相談する必要があります。
・造影剤を投与された後に、気分が悪くなったり、じんましんが出たりすることがあります。また、極めて稀に、冷や汗が出たり、胸が苦しくなることがありま す。このような症状は検査終了直後だけでなく終了後数日後にあらわれることもあるのでその場合はすぐに主治医等に連絡する必要があります。
MRI検査体験
診断時に担当医が予約してくれた日から3日後、MRI検査を受けに行きました。つい先日、CT検査を受けたばかりなので、ある程度の要領はわかっています。しかし、CT検査は今回が2回目でしたが、MRI検査は初めてのことでした。当日は日曜日でしたが、聞くと、そこでは、MRIだけ日曜日もやっているとのことでした。
受付を済ませると書面でのアンケートがあります。つまり、これまでの罹病についての質問、とくに喘息やアレルギーについての質問に答を記入してインタビューを待ちます。暫くすると、検査前のインタビューがあります。
書面で答えたことをもう一度担当医が直接口頭で聞いてくるのでそれに答えます。気が短い私は、書面でもう答えてあるのに二度手間で面倒だと思うのですがじっと我慢、病院ではよくあること。間違った情報を元に治療を施すととんでもない医療ミスを犯すことになりかねないので、何度でも確認するのが通例です。
私の場合、問診の係は、CTの時は中国人女性で、今回は日本人男性でした。いずれも若かったのでひょっとしたら研修生かなと勝手に思いながら質問に答えます。同じ診てもらうなら、未経験な若い先生よりベテランの経験豊富な先生の方がいいと思いがちですが、将来の名医を育てるためにはこれも必要なことかと余計なことを考えてしまう。
さて、検査本番に呼ばれます。検査着に着替えますが、そこでは検査着は紙でできたもので頭からすっぽりかぶるようになっていました。今まで、人間ドックなどで着替えた検査着は布製で、洗濯することで繰り返し利用するものでしたが、今回初めて紙製の検査着を着ました。コストについては知らないが、一度きりの使用で捨てるようになっているので、着る立場からいうと清潔でしかも自分専用感があって悪くはない。
検査室に入ると、部屋の中央部にテレビで見たことのあるドームがあります。ベッドに仰向けに寝て腰の位置を慎重に調整する。身体が動かないように少しきつめにベッドに縛られます。今回は造影剤を使うので、静脈に針を入れる。造影剤や閉所恐怖症で気分が悪くなった時のための連絡用のブザーを渡されます。大きい音がするのでヘッドフォンをします。一瞬音楽でも聞かせてくれるのかと思いましたがそんなサー ビスはなさそうです。
ドームの中に入る。暫くするとマイクで連絡があり、検査が始まりました。最初は、比較的低めの音で、間隔もゆっくりですが、次第に高い音になり、間隔も短くなる。樫か何かの堅い木を木槌でたたいているような「カン、カン、カン」という音が響く。あとで、MRIの説明書(パンフレット)を見ると、「木槌で木をたたくような連続音」と書いてあったので、自分の表現力もまんざら捨てたもんじゃないなと、ひとり悦に入る(笑)。
検査も無事に終わり、先生に言われていた通り結果をCDに焼いてもらうのを待つ。通常は40分ほどかかるらしいのですが、日曜日で患者も少ないからなのか、15 分ほどで受け取り帰宅する。翌日、病院でこの結果を診てもらうと、直径4.2センチの癌が筋肉にくっついて見えるのだが、そこに一本の細い線が見える。「これは腫瘍が、血管を引っ張り込んでそこから栄養を摂りこんで成長しようとしているのです」と先生が言う。なるほど、CT検査でわからなかったことがMRI検査でここまでわかったのだと納得。
この腫瘍はまず表在性と思われるけれども、浸潤があるのかないのか、どこまで浸潤しているのかなど更に詳しく調べるため、後日、内視鏡検査をすると言います。MRIを撮ってさらに、また検査?と思いましたがここまできたらもう任せるしかありません。ということで次の検査の日が決まりました。その日は、妻の手術当日の翌日でした。
一難去ってまた一難。次は、自分にどんな検査が、どんな手術が、どんな治療が待っているのか、不安が小さくなることはなかなかなさそうです・・・。
~つづく~
蓬城 新