イラン追想(その10)海賊と呼ばれた男

映画「海賊とよばれた男」 (原作 百田尚樹)

モデルは出光佐三。出光興産の創業者です。

日本の復興のために立ち上がった多くの男のなかでも、この人物のスケールは傑出しています。

昔中東で仕事をしていたので、彼の話は知っていました。

戦後間もないころ一民間企業の出光興産がタンカーを仕立てイランに乗り込み、石油を輸入したエピソードはうろ覚えながら知っていました。また、同社は一般の企業の枠からはみ出た異色の存在で、社員は社長を店主と呼び、家族経営で上場はせず、資本金一億円、組合はない(今は違うかもしれませんが)とか。

断片的な知識だったものががこの映画でひとつにつながりました。

この物語に出ているイランと日本との関係は次のようなものです。

当時イランは英国資本の油田を強制的に接収して国有化しました。生命線を握る石油産業による立国をめざし、英国からの支配を脱却する民族主義的な動きでした。

これに対し、英国は意趣返しにイランを牽制し、英国海軍がイランから輸出されるタンカーの拿捕をおこなうという暴挙に出ます。

この緊迫した状況の中、出光は危険を顧みずタンカーを送り込み、イランの石油を満載して無事、包囲を突破し、日本に石油を持ち帰るという実話が再現されています。イランが日本の一企業の英断と勇敢な行動に拍手を送った事件でした。

岡田准一の演技が実に迫力があり、以前にくらべ格段に演技力がアップしています。多くの人に観ていただきたい。

 

風戸 俊城

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