追憶のオランダ(33)奇妙な地形-1

オランダの地図を見ていると奇妙な地形があることに気付きます。10万分の1の縮尺の地図であれば、それははっきりと分かります。そこは水であることを示す青色で塗られていて、○○Meer(メーア), △△Plas(プラス)と 書かれています。池か、沼か、はたまた湖かと思われるのですが、その形が何とも奇妙なのです。広い面積の水の中に細い紐のような道が見えるのです。下のReeuwijk(レーウワイク)の地図をご覧ください。

Reeuwijkは、チーズで有名な Gouda(ハウダと読みます、日本ではこの地名がついたチーズをゴーダチーズといいますが。)の近くの小さな村です。その青く塗られた中に見える奇妙な紐のような細いものは確かに道ですが、その道幅は車が一台通れるだけのものなのです。その奇妙な道に車を走ることになったのは、筆者が漆を習っていた先生のお宅がこの地図の右端に見える Oukoop(アウコープ)の先にあったからなのです。毎週土曜日ロッテルダムから通っていたのです。初めてこの細い道を走った時は、路肩の崩れやすそうな様子にちょっと不安な感じがしたのを思い出します。しかも、この道は一方通行ではないのです。もし対向車が来たら、そのままではすれ違えません。さて、どうするのか。道のところどころ(ほんとうに所どころ)に、待避所のようなものが設けられていて、車がお互いに出くわすと、おそらく「とても親切な人」か、「気の弱い人」がそこまでバックで下がって対向車をやり過ごすことになります。しかし、この道をバックで待避所までさがるのは、下手するとかえって脱輪しそうで、これまたとても怖いのです。したがって、向こうから対向車があると分かれば自分から早めに待避所に入って対向車をやり過ごして、対向車のいなくなったのを確認してから進むのが安全です。また、この道は、両側が水というところが結構多く(この地図で青いところはすべて水です)、その水面は路面から数十センチあるかなしかなので、風の強い日などは、両側から水がバシャバシャと路肩を洗い、路面をも簡単に乗り越えてきて、一瞬道路が全く見えなくなることさえあります。
ある晩秋の嵐の日、行きはまだよかったのですが、夕方の帰り道は最悪の状況になっていました。その時はさすがに心細さを通り越して恐怖さえおぼえたものです。この時期オランダでは日の暮れが早く既に辺りは真っ暗闇、明かりというのは自分の車のライトだけ。今思うと、何だか Stand by me の歌い出しのようでもありました。この道には街灯もなく完全な無灯火なのです。唯一の明かりである自分の車のライトも吹きつける雨のためフロントガラス越しには滲んで、視界は一層悪くなっていたのです。「どこが道だーー!」と思わず一人で大声で叫んでいました。この道に乗り入れてしまった以上、ゆっくりでもいいから前に進むしかない。後ろに下がっても問題は解決しないばかりか、より危険。ということで、四苦八苦の末になんとかその場を切り抜けることができました。このあたりに住むオランダ人でさえ時々路肩から脱輪して車ごと水没することが度々あるそうです。筆者のこの先生も、また近くに住む先生の友人も車を水没させ、結局、新車を買わざるを得なくなったとか。

しかし、そんな場所を観光名所にしている地域もあり、オランダ人はなかなか商魂たくましい。この地形ですが、もともとはライン川に下流に出来た低湿地に太古の時代から生えていた植物などの堆積物から出来た泥炭を燃料として長年掘り採った後の窪地に水がたまったものなのです。したがって、溜まっている水は植物のタンニンが溶け出して褐色をしています。「クラーリンゲンのお化け屋敷」でも書きましたクラーリンゲンプラスというのも「クラーリンゲンの水たまり」ということなのです。それと、現在は水こそ溜まってはいませんが、オランダには□□veen(フェーン)という地名がたくさんありますが、例えばアムステルダム郊外で近年発展している町Amsterveenなども昔は泥炭を掘った後なのです。ということで、その一帯は掘り取った分だけ周囲よりは地面が低くなっています。しかし、土地が低い割には全くジメジメはしていないところが面白いところです。

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