追憶のオランダ(36)パーキング用の1ギルダー硬貨

これは私がオランダに来て間がない頃のことです。その当時はまだホテル住まいで、自分の車もない頃です。通りを歩いていると、「旦那さん、1ギルダー恵んでください」と手を差し出して近寄ってくる物乞いに結構出会いました。オランダ語は喋れませんが、身振り手振りで明らかに物乞いと分かります。その時は、NOと言って追い払う仕草をしていました。

また、こちらが東洋人だと分かるので、よく東洋系の物乞いが中国語らしき言葉で近寄って来るので、「メイヨウ チイエン(お金持ってない)」と追っ払いました。

ある時、向こうから男性が近づいてきます。それも反対側の歩道を歩いていて道路を渡ってこちらの方に向かってきます。そして、おもむろに「1ギルダー持っていないか?」と聞いてきました。私は、それだけで、また物乞いかと思い、「No, No money」と言って急いで通り過ぎようとしました。が、その男性は手に1ギルダー硬貨とあと25セント硬貨数枚持っているのを見せるではありませんか。この野郎、まだ小銭をせびるつもりかと思い、そのままその場を去りました。

しかし、後で、それも自分が車を持つようになって、街なかで路上のパーキングに車を止めるようになって、やっとその時の男性の意図が理解できたのです。悲しいかな、言葉が通じなかったのと、パーキングメーターのことがよく分かってなかったのとで、彼には大変気の毒な事をしたことに気付きました。彼はおそらく、硬貨は持っていたものの、パーキングメーターには使えない25セント硬貨4枚を1ギルダー硬貨に交換してくれないかということを言いたかったのではないか、いや実際にはそう言っていたのに私がそれを正しく理解せず、ただの図々しい物乞いかと早合点してしまったからだと気づいたのでした。遅きに失したとはこのことです。

もう彼と会うことはありませんが、もし会えたら、あの時は御免、と言いたい気持ちです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です