追憶のオランダ(49)煙草の自動販売機
ヨーロッパはどの国へ行っても日本のように自動販売機(自販機)というものをあまり見かけません。あまりというよりも、殆どと言っていいでしょう。そこには販売についての宗教上のものの考え方が根底にあるとも言われています。もしかすると、間違っているかもしれませんが、休日には一部の例外を除いて、ほぼ完全に店を閉め営業はしないということともどこかでつながっているような気もします。最近でこそ、週末にも営業をする店が増えては来ましたが、以前は、旅行者にとっては殆どの店が閉まっていて週末は実に淋しいものでした。そんな週末、店が開いていないのに夫婦連れだってその閉まっている店のウィンドーの中の商品を見て回っているのを見かけ、これぞまさに「ウィンドーショッピング」そのものだと感心したことがありました。ドイツでのこと。
そもそも歴史的には自販機は産業革命後のイギリスで実用化されたらしいのですが、その後ヨーロッパではあまり普及しなかったようです。一方、日本ではアメリカの清涼飲料水が自販機で販売されたあたりから急速に台数・種類が増え始め、今やタバコ・清涼飲料・酒類・菓子・新聞雑誌・切符等、多種多様の自販機が街のいたる所に設置されています。聞くところでは、自販機による年間売り上げは5兆円とも言われます。
前置きが長くなりましたが、オランダの自販機事情についてです。オランダで最もよく目にしたのは、駅などにある小さなコインロッカーか下足箱のようなコロッケの自販機です。それ以外ではカフェバーなどでのタバコの自販機でした。それは、何か横長くて一見ジュークボックスにも見えるようなもので、いろんな銘柄のタバコの箱の絵が表示してあります。左の写真はイギリスのものですが、これと似たような形式のものでした。当然硬貨(紙幣は使用できなかったと記憶している)を投入してその絵を押すとそのタバコが出てくる。ここまでは、日本程洗練されてはいないが一応自販機です。しかし、その自販機で使える硬貨が限定されているのです。そして驚くことに、つり銭のシステムがないのです。正確なことは忘れましたが、使える硬貨は5ギルダーと1ギルダーのみだった。
例えば、5.5ギルダーのタバコはどうやって買うの?それは、6ギルダー分を入れるのです。すると、なんとタバコの箱に25セント硬貨が2枚テープで張り付けられたのが出てくるのです!つまり、この自販機にはつり銭の機能がないからこうなのです。タバコの価格が値上げされれば、その都度貼り付けるつり銭の金額も変わるということなのです。ただ残念ながら、つり銭の硬貨を貼りつけられたタバコの証拠写真を残せていません。
この当時はこの自販機につり銭機能をつけた新しい自販機に設置し直すよりも、つり銭を貼りつける方がコスト的に安かったということかもしれませんが、日本ではちょっと考えられない事ですね。ただ、それは20年以上前の昔話ですから、今はもうつり銭機能が付いた新しいものが設置されているのかもしれません。
それと関連したことで、一つイギリスでの面白い話です。
日本からの出張者と一緒にイギリスに出張に行ったときのこと。彼は自販機を見つけ一箱買ってきたのはいいのですが、20本入りのはずが、本数が少ないのです。タバコが値上げされて間がない時のことだったのでしょう、まだ、自販機には値上げされる前の金額が表示されていて、買う人は旧価格の硬貨を入れるとその自販機からは従来のようにタバコは出てくるのですが、その箱には20本ではなく本数を値上げ分減らされて、16本入りの箱が出てきたのです。これは考えたな、と思いましたが、はたしてタバコの製造段階で本数を減らすか、自販機の設定を変更するか、どちらが合理的なのか?おそらく、国中に数多く散らばっている自販機を調整する手間よりもタバコ製造会社の生産ラインで本数を減らす方がコストがかからないということではないでしょうか。これも、証拠写真を残しておくべきだった・・・。