追憶のオランダ(7)親切なお役人

オランダに赴任してすぐの頃、仕事の関係で、ある商品の欧州での登録方法について一般的な話を聞きたくてその管轄の役所を訪ねて行ったところ、下っ端の担当ではなくかなり上席と思われる人物が応対してくれました。こちらは概略の話だけ聞ければそれで十分だったのですが、あれこれ説明を聞いたところで、そのお役人に「まだ時間はあるか?」と尋ねられ、「少しくらいは」と答えると、「さあ、それでは少し早いがランチを食べよう、詳しい話はそれからだ。」とばかり、役所のレストランに連れていかれたのです。もうそれまでに小一時間は話しているのに、です。

ランチを食べ終わると「ここは安いんだ。客に金を払わせるわけにはいかぬ。」と昼を御馳走にまでなり、それからたっぷり一時間半以上彼の懇切丁寧な講義を受け、こちらの疑問にも答えてもらうことになりました。こちらはすっかりその日の午後のスケジュールは狂ってしまったのですが期待以上の収穫まで得られて大いに満足。いざ失礼しようとしたところ、「またおいで、いつでも相談に乗るよ。」と非常に親切です。この日はたまたま暇だったから、気まぐれで相手をしてくれたということでもなさそうに思えたのですが、日本に、こんな親切なお役人さんはいますかねえ?

でも、最終的に私は大事なことを一つ抜かってしまっていました。要件をすべて終え車に戻ってみると、役所専用の駐車場だと思って止めていた車にオランダに来て初めての駐車禁止の切符を切られていたのです。これは、私自身の不注意のため、会社に罰金(2-300ギルダーだったと記憶している)の請求をするわけにもいかず身銭を切る羽目に。この日の授業料と考えればお安いものと無理やり納得はしたものの、それにしても、融通のきかぬ交通警官よ、見逃してくれてもいいではないか。せっかく、オランダのお役人は親切で素晴らしいと褒めたばかりなのに・・・。

 

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