オランダ点描(19)歩道
ハイウェイとか主要道路となるとさすがに石畳とかレンガ敷きのところはありませんが、街なかの普段の生活空間である道路は、特に歩道については石畳・レンガ敷きがほとんどです。ハイヒールの女性とか、足の不自由な老人とかにとっては微妙なデコボコがあり必ずしも歩きやすくないのではないかと気になりますが、どうもオランダの女性も老人もこの方が好きなようです。
石畳やレンガ敷きの道はアスファルトの持つ扁平な無表情な感じとはちがい、どこか温かみが感じられるからかもしれません。例えば一時的な大雨が降った場合、アスファルトかコンクリート舗装の路面では雨は地面に吸収されずすぐに道路脇に水たまりをつくってしまい、思わぬひどい目に合わされることもしばしばです。レンガ敷きの道なら効率よく雨水を吸いこんでくれます。降った雨水を無理なく地表から地下におくりこみ、水の自然循環という観点からも理にかなっています。
最近の日本は、昔のような土の道がどんどん少なくなって都市化・近代化の名のもとに至る所がコンクリートに覆われてしまい、折角の天の恵みの雨もすぐに行き場を失い道路に大きな水たまりを作り、その果ては濁流となって道路際の側溝を目指してあっという間に下水道へ。そして、地表をあまり潤すこともなく、あわただしく川から海に流れ去るだけです。豊かな地下水が蓄えられるチャンスはだんだん少なくなっているのではないかと心配されます。
そのレンガ敷きの歩道ですが、デコボコなく一面平らに敷き詰めるのはよほどの熟練が必要です。私は日本でこの作業を見たことはありませんでしたが、こちらではよく見かけます。まず、砂を敷き詰め、それを職人が2mほどの棒切れをもって一方の端を中心に円を描くように何度も一帯の砂の水準をあわせます。およそ水準ができたところで、端から一つずつレンガをおいて敷き詰めていきます。
一区画のレンガを置き終わったら、おもむろにゴムのついた大きなハンマーでレンガをトントンと叩いて回り、さらにその上に満遍なく砂を振りかけハンマーで叩きながら路面となるレンガの高さを平準にしていきます。言ってみれば極めて単純な作業ですが、私はしばらく職人の動きに見入ってしまい、職人から怪訝な顔をされたことが何度かあります。
そこで聞いたことですが、職人曰く、「一度の費用はかかるが、結果的に道路を長持ちさせるには、レンガを縦に(レンガの3面ある中の、細長い面を上に)敷き詰めるんだ。」と言っていたのを覚えています。写真は、そのレンガの並べ方が分かります。