コッツウォルズの歩き方㉝~心残りはミュージカル
1999年に、自ら企画、実行したイギリス自由旅行記「コッツウォルズの歩き方」を掲載しましたが、実はこの旅行についてのいくつかのエピソードや感想があります。随分と昔の話で恐縮ですが、書きためたものをいくつか紹介していきます。
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心残りはミュージカル
今回の旅は、初めて自分で企画実践した割には、まずまず成功だと自負している。それでも実はやり残したことがある。それは、ミュージカルだ!
ロンドンのウエストエンドは、ニューヨークのブロードウエイと肩を並べるミュージカルのメッカである。そのロンドンに行くならミュージカルを見ない手はない。実は、ロンドンに入った初日か2日目にミュージカルを見ようと計画していた。人気の高い「オペラ座の怪人」などは半年先まで予約で埋まり、チケットも日本円で5万円(正規の料金の10倍)ものプレミアムがついている。
そんな超人気のものでなくとも、「スターライト・エキスプレス」「キャッツ」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「グリース」「美女と野獣」「ジーザス・クライスト・スーパースター」と挙げればきりがないが、どれかひとつくらいは見られるであろうと思っていた。
夕食を摂るまではその気でいたのだが、何だか疲れてしまい早くホテルに戻ってゆっくりしたいという気持ちになってしまった。今回の旅行では、とにかく朝は早く目がさめ、積極的に歩き回ったせいかいつもより疲れ気味になったようだ。結局、二人ともミュージカルのことはついに口にせずじまいであった。せっかく本場のオリジナルを見る絶好の機会だったのだが・・・残念!
こんなことを言うと、ミュージカルファンのように聞こえるかもしれないが、実は、本場だから見てみようと思っただけだ。これまでは全く興味がなく、日本でも見に行ったことがなかった。帰国してから娘の誘いもあって初めて見たのが「Wicked(オズの魔法使い)」であった。無知の私は、正直「ミュージカルなんて劇に歌がついただけで、面白みがあるとは思えない。劇なら劇、歌なら歌だけ聞いた方がよい」と思っていた。
ところが、「Wicked」を見たときには、体が震えるほど感激したのだ。それ以前は1800円払って映画を見るのも億劫で、封切りからかなり時間が経ってしまうがテレビで同じものが見られるのだからそれで十分と思っていたくらいだ。それがこのミュージカルを見てからは、10000円以上支払っても価値があると思うようになりその変わり様には自分でも驚いた。
それ以降、「キャッツ」「美女と野獣」「アラジン」などいくつか連続して見に行った。中でもよかったのは、それこそ本場イギリスから来た「WAR HORSE(戦火の馬)」の日本公演である。あの狭い舞台でまさに戦場に居るような錯覚を覚えさせる演出・技術が素晴らしくまたまた感激したのだった。いつかまた機会があれば、ロンドンでミュージカル見たいと思っている。
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(付記)
我々団塊の世代は会社人間になってしまうことが多く、家庭を顧みなかったり、近所付き合いが下手で、退職後の暮らしが寂しいものになりがちだとよく言われた。現役の頃は同僚や得意先の人と出張で飛び回ったり、趣味なら休日もゴルフに出かけたりで忙しく過ごす。ところが、一旦退職して会社時代の人とのつながりが減ると途端にすることがなくなり元気もなくなってしまう。
そういう寂しい老後にならないためには、50歳位から定年までに老後も継続できる趣味を作っておくべきだと言われた。できれば、1人でできる趣味とグループでできる趣味の両方があれば理想的とも。このことは、丁度50歳になるときに会社の研修でアドバイスがあったもの。今思うと確かにその通りである。
その意味では、「旅」は新しい自分を発見できる良いチャンスであろう。昔から「傷心の旅」という言葉があるが、別に心が傷ついていなくてもおすすめである。何故なら日常から離れることで何かしら新しい自分を発見できると思うからだ。そしてその旅は、できれば与えられたお仕着せのものではなく、できるだけ自由気ままな旅であればなおよいと思う次第だ。
(了)
数年前にロンドン滞在の折り、「オペラ座の怪人」を鑑賞しました。当時娘夫婦が現地に赴任しており、予め切符を手配してくれていたのでした。そうでもなければこの人気プログラムを容易には観ることが出来なかったでしょう。おかげで感動に胸が打ち震える体験をすることができたのでした。
私は、50歳代で初めてミュージカルというものを見ました。劇の途中で歌を歌うなんて変だと勝手に思い込んでいたのです。娘に、とにかく一度見てごらんと勧められて鑑賞したのが劇団四季の「WICKED」でした。もう、感動で涙が出るほど胸が打ち震えたことを覚えています。その後も、娘のお勧めがある度に何度か行くようになりました。やはり、芸術は人を感動させるものだということがよくわかりました。