新加坡回想録(44)落ちたロープウェイ
その昔、日本では、シンガポールは小さな国というイメージを表すのによく淡路島に例えられた。日本の島の中で面積が最も近いのが淡路島だったからだ。しかし、その後、埋め立てによって国土が広げられて、「東京都区内」に代わり、最後には、「奄美大島」くらいの大きさになった。いずれにしても車で走ると東西で2時間、南北なら1時間も走れば、海に突き当たってしまうほどの狭さである。
今では、日本人にも大変人気のある観光地となったので、ご存じの方も多いと思うが、北は、コーズウェイでマレーシアと繋がっており車で行き来が出来て、最も近い外国である。南には、一大観光スポットとして開発されたセントーサ島があり、今では、セントーサ・エクスプレス(モノレール)で簡単に行ける。
筆者が出張で訪れていた頃から駐在してすぐの頃は、まだモノレールはなく、ケーブルカー(現地ではこう呼ばれているが、実際はロープウェイ)に乗って島に渡った。マウント・フェーバーと言う小高い山から海を超えて対岸のセントーサ島まで渡るのが観光の出発点だった。
日本の観光地によくあるロープウェイに乗ることに躊躇することはあまりないと思うが、東南アジアの技術は日本と比べて劣っているという先入観があると怖いものだ。出発した途端に、かつてそのロープウェイが落ちたことがあるという話をして怖がらせるのが私のアテンドの定番だった。
もうひとつ、市内を案内している間にたくさん見かけるHDBフラットは殆どが韓国の建設会社によるもので、その柱は非常に細く、特に、高層なのにも関わらず、1階部分が柱だけで、駐車場だったり、お店の空間だったりするのを見ると大丈夫かなと思ってしまう。シンガポールには地震がないので、問題ないと高をくくっているようだが、果たしてどうなのか。
(西 敏)