手拭いの暖簾(7)ほおずき

老舗の旅館の女将さんはそれぞれの場所に見合った花を活け、季節に合わせて書画骨董を飾る。それが仕事の一部だと聞いたことがあります。季節は一週間の先取り。お客の人数や年齢、旅の目的その他さまざまな状況を判断して少しでもくつろげるようにとの心遣いをされるそうです。

それに引き換え我が家の手拭いの暖簾はというと 気に入り季節に関係がなければずっと掛かっていたり季節に追いかけられてあわてて掛け替えたり! 見事な怠けぶりです。

最初の頃は扱う店も少なくあちこち気を付けて探しまわりました。昔からある「かまわぬ」の代官山の本店まで街見物を兼ねて行ったこともあります。図柄は日本的な素朴な感じで色も多くは重なっていませんでした。暫くして手拭いブームになり店がたくさん出来ました。図柄も鮮やかな色彩で絵画に近づいてきたようでした。そうなると手持ちもそこそこあったことから興味が薄れてしまいました。人間って全く勝手なものです。

それからしばらくして押上の「タバコと塩の博物館」へ行った帰り道。小さなおしゃれな店でこのほおづきの華やかな手拭いを見つけ、衝動的に買ってしまいました。けれども夏に色の入った手拭いはかえって暑苦しく感じられてペアに並ぶもう一枚がいまだに見つけられないでいます。物事はよく考えてしなければと少し心にとどめたことでした。

 

AZ

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